「有事の金」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、経済危機や戦争などの非常事態において、金の価値が上昇する傾向があることを表した言葉です。では、なぜ金は数ある投資対象の中で、特に安全資産として選ばれ続けているのでしょうか。
その理由は、金が持つ本質的な特性にあります。金は国や企業が発行するものではなく、自然界に存在する実物資産です。株式は企業が倒産すれば紙切れになり、通貨は国が破綻すれば価値を失います。しかし、金という物質そのものは、どんな経済状況下でも存在し続けます。この「実物としての確かさ」が、金を安全資産たらしめている最大の要因なのです。
歴史を振り返ると、金の価値は時代を超えて認められてきました。古代エジプトの時代から、金は富と権力の象徴でした。中世ヨーロッパでも、近代アメリカでも、金の価値が否定されたことはありません。人類の歴史において、5000年以上も価値を認められ続けている資産は、金以外にほとんど存在しません。この普遍性こそが、金の信頼性を裏付けています。
現代社会において、金の役割はさらに重要性を増しています。2008年のリーマンショック、2020年のコロナ禍など、世界経済が大きく揺らいだ時、金価格は急騰しました。これは投資家が「安全な場所に資金を避難させたい」と考えた結果です。株価が暴落し、通貨の価値が不安定になる中で、金だけは確実に価値を保つ資産として選ばれたのです。
インフレーションに対する強さも、金の大きな魅力です。物価が上昇し、お金の価値が目減りしていく時期でも、金の価値は相対的に維持されます。なぜなら、金の量は限られており、中央銀行が紙幣を刷るように簡単に増やすことができないからです。この希少性が、インフレに対する強い防御壁となっています。
ただし、金が完璧な投資対象というわけではありません。金は株式のように配当を生みませんし、預金のように利息もつきません。金の役割は、資産全体の中でリスクを分散し、危機的な状況から資産を守ることにあります。すべての資産を金に投じるのではなく、ポートフォリオの一部として保有することで、その真価が発揮されるのです。